喜びのある人、ない人 復讐へのプロローグ


バシャールの生活では、全ての行為は喜びに基づいて行われる。地球では、喜びを少し知っている人が、人生に喜びのない人を変えようと躍起になり押し付けようとする。君には喜びを感じることは困難だろう?と言わんばかりに。

僕の方が(ほんのちょっぴりだけど)、喜びを知っているんだ。僕の言う通りにすれば、君も喜びに満ちることができるんだよ?分からないの?僕に従っていれば幸せになれるんだよ。真似しなさい、と。


押し付ける本人は良かれと思っているけど、例えそれが良いことでも、押し付けられて無理やりやらされたらただの強制になるんだ。相手の自由意志の侵害。外乱。自分でやろうとしてたのにゴリ押しされたら恨みしか生まれない。

相手には無理だろうと思っている時点で、相手を見下している。能力がないと。逆に、僕の方が喜びを知っているんだ、つまりそういう能力がある、と心で思っていることになる。そんな思いがあれば、すぐに相手には伝わる。

相手に芽生えるのは、劣等感、反発心、怒り、悲しみ、復讐心…。


そして一定の水準に達した怒りは反発心となって復讐へと駆り立てる。

復讐の第一歩は、対象となる人のリサーチから始まる。生活習慣、趣味趣向、推し、好きなことから嫌いなことまで可能な限り調べ尽くす。行動パターンから思考パターンまで。

そうしてその人が喜ぶこと、嫌がることを徹底的に収集する。これは意識的に集める時もあれば、無意識で行うこともある。

ある程度データが溜まってきたら復讐開始のゴングが鳴る…。

復讐の方法は否定やカウンター、無邪気を装う。

否定は文字通り否定することだが、その人の悪い面を否定すると、(-)×(-)=(+)になってしまうから結果的にその人がプラスに、つまり幸せになってしまう。だから、最も効果的なのがその人が好きなことを否定する事だ。例えば好きな歌などを、バレないようにそれとなくけなしていく。「この歌売れてるけど、なんかパッとしないというか…。ついチャンネル変えちゃうなぁ」。

または嫌がる事をあえて話題にしたり、勝ち負けをはっきりさせるような言動をする。いわゆるマウンティングだ。

カウンターは、その人の好きなことを肯定し続けるものの、最後にドカンと否定する。この落差が大きいほどカウンターの威力は大きくなる。

そしてそれらを無邪気に行うことで、悪気がある訳ではないという事を演出できる。


こういう構造に気が付いている人は、後でそれらが利用されないようにガードを固くする。つまり好きなことも嫌いなこともできる限り表出しないように細心の注意を払う。こうして心を閉ざしていく。

心を閉ざす者は、やり過ぎると相手に不信のサインと取られてそれもまた利用されるから適度に打ち解けているふりをする。その演技が見抜けない人は、この人はいい人だなと勘違いする。

隠しておきたいものが多いほど、その人の心の闇が大きいことを意味する。

大げさな人、わざとらしい人、極端な人、よそよそしい人、演技っぽい人など。心の闇を隠すように、またはバレないように反動的に不自然な言動になる。

そして、無理に心の闇をこじ開けようとする者も現れる。それが冒頭に書いた、親切を装って近づくものだ。あなたの心の闇がいかに不幸かを無意識に刺激してくる。そして刺激された方は怒りと復讐心が芽生えていく。


自分の心の闇と向かい合ってきた人は、その闇から這い出るのは自分の意思とタイミングがあることを知っているから、無理にこじ開けることはしない。だから人間関係でモメることはほとんどない。

それが本当の優しさだ。相手の闇の部分、心の傷の痛みも知っているからそこを刺激する事はない。

だが、優しい者はすでにそれだけで能力があるから、そこに嫉妬する者もいる。ただいるだけで嫉妬されてしまうこともある。しかし、能力者は勝手に嫉妬するのは単にその人の問題だから、一向に意に介さない。能力者はその雰囲気にすぐに気付くが、気付かないふりをしてやり過ごす。相手の嫉妬心を刺激する必要はないからだ。少しでも刺激しようものなら、復讐の対象になることを知っているから。

これが賢さだ。