ギフテッド


先日ギフテッドの番組を見た。他人よりも優れた能力を持つ人々のことだ。

おそらくギフテッドとは、結論から言えば他の人が時間をかけてやるところを時間をかけずに想像より上まで到達できる人の事だろうと思う。だから手品のように見えるし、すごいことだと思える。自分にはそんな事ムリだ!と思っているところをいとも簡単にやってしまう。

逆に、そんなことは自分にもできる、と思える人がたくさんいればそれはギフテッドとは呼ばれなくなるだろう。いわば普通の人になる。

つまりギフテッドを自分とは無関係だと思うことは、自分には不可能だ、なぜなら自分は能力が無いからと烙印を押しているようなものだと思う。物事をすごいレベルでやる現実やフロアにまだ自分がたどり着けていないだけなのに。

ギフテッドになりたいと思ったならば、どうやったらできるのかを1つずつ獲得していけばいい。例え時間がかかっても初めはしょうがないんだ。そこにもし自分への失望が生じたら、それは人生の課題に向き合えたという事だ。

きっとギフテッドの人たちはたくさんの転生の中で何度も何度も試行錯誤を繰り返していたに違いない。今生でその集大成としようとしているのかも知れない。

そんな彼らはたいてい空気が読めないとか、人間関係が難しくなるなどの課題があることが多いとのこと。空気が読めない、というのは逆から見れば相手の許容範囲が少ないという事でもある。相手はギフテッドの自由さを理解することができない。それは相手の人が自分の自由を実感した事がない、または追求しようともした事がないからだ。だから理解もできないし受け入れる事も不可能だ。

普通の人は不自由であることに何の疑問も抱かない。それは自由でないという事に気付いていないという事。親や友人、テレビなどから植え付けられた情報や言葉を潜在意識で信じているから、本当の自分の内から出る言葉をまだ聞いた事がない。もしくは聞かないようにしているのだ。なぜなら自分の声を聞くことは、今まで信じてきたことを否定することになる場合があるからだ。

ギフテッドはそんな偽りの情報には何の興味もない。みんなが偽りの中で一喜一憂していることにかなりの違和感を感じる。だけでなくより真実に近い知識があるから、普通の人がしている回り道を正したくなる。だから話が合わないし、普通の人からすれば理解できる範囲の外側の話をされるから、普通の人との和は保てない。

そこでギフテッドは壁にぶち当たる。明らかに近道があるのにみんな分かってくれない。そちらのほうが効率も良いし時間も節約できる。それを教えることは人助けになるんだ、と信じて目立つ言動をする。だけどいくら教えてもやって見せても、一向にみんなが付いてこない。おかしい。変だ。なぜ分からないのか。自分の教え方が悪いのか。ひょっとして僕のことが嫌いだからわざと分からないふりをしてるのか。頑張れば頑張るほどなぜかみんなとの間に溝ができていく。

僕はすぐに理解できたからみんなもできるはずなんだ。簡単なことなのに、誰も聞いてくれない。僕のせいか?僕のせいかも。いや、僕のせいだ…。僕がいることでみんなをイヤな気分にさせている。僕がいるだけでみんながシラけてしまう。もう耐えられない、人といることは自分も相手も疲れてしまう…。みんなとは離れていた方が楽だ。

こうして孤立していく。

ここでギフテッドは2種類に分かれる。1つはこのまま人間関係が築けずに孤立し、自分を責めて悩みを抱えたまま過ごしていくこと。もう1つは、相手が意地悪でも僕を嫌いなのでもなく、ただ理解ができなかっただけなんだ、と気付いて自分のやり方を押し付けることはせず、自分が自由にやっているのと同様に各人の自由を尊重するという事。もし相手が知りたい事があって何か聞いてきたらその時に助言すればいい、くらいの距離感を持てるようになる事だ。

ギフテッドからしたら、こんなやり方もあるのになぁ、と思える事があってもそこは各人に任せる。その人にとってはそのレベルでの試行錯誤が必要なのであって、最短ルートを知るためだけに生きている訳ではないのだ。

だが、ここでもまた1つの壁ができる。普通の人が一生懸命やっている姿を見て、こうすればいいのになあと思いつつ各人のレベルに話を合わせるから、ギフテッドは本音が言えなくなる。すると普通の人から見ると、何か腹に隠しているように見えるのだ。本音を言ってないことは何となく分かる。言いたい事があるはずなのに何も言わない、ひょっとして私を内心でバカにしてるのかも…。だからこちらも本音は隠しておこうと思うようになったり、被害妄想から嫌悪感に変わったりして、結局お互いに打ち解けることが難しくなる。

これは誰が悪いわけでもない。自分も悪くないし相手も悪くない。なぜならみんなその時を精一杯生きているからだ。

だからギフテッドも普通の人も、その時にできることを一生懸命に集中してやるだけでいいと思う。押し付けずに、また自己卑下することなしに。普通の人も分からないと言いつつも、意外と横目で見て何かを盗もうとしていることも多い。今さら聞けないとか、聞くのが恥ずかしいとか、聞いたら負けになるとかいろいろ頭の中が忙しい人も多い。

植物でも種類によって成長のスピードは全く異なる。人間もそれと同じだ。どうしてもギフテッドに嫉妬や羨望してしまう場合は、こう考えましょう。

「彼らは違う星から来たからしょうがない」