里親をもらう前世記憶


前は里親に出された悲惨な前世記憶を掘り起こした。吐き気を乗り越え、その怒り、その悔しさ、その悲しさを受け入れられたと思う。


里親についてはまだ掘り足りない部分があると潜在意識が語りかけてくる。早速その声に耳を傾けてみたい。


今度は私が里子をもらった記憶だ。やや裕福な家の主人でいよいよ里親になると夫婦で決めた。細かい手続きを得て、彼がうちに来た。金髪で目が青い白人少年だ。物静かであまり言葉を出さない。

しばらく一緒に暮らしていたが、不思議なことに物がなくなる事が多くなった。注意深く探してもやっぱりないのだ。現金や懐中時計、金縁のカップ、妻の宝石、キャンドルや燭台…。

家政婦に問うとその少年が盗んでいるという。そこで彼に問いただすが、知らないの一点張り。証拠がないだろうと理屈を並べる。

だがある時彼のカバンからこれから質入れするであろう家の物と覚えのない現金を見つける。現行犯だ。それを厳しく叱ったつもりはないが、その日以来、彼の凶暴性がむき出しになっていく。


居間に並べてある食器類を次々に落としたり、壁に穴を開けたり、人に暴力を振るったり。そのせいで長年いてくれていた家政婦さんは辞めていった。

彼はあろうことか私の妻の寝込みを襲い、手を出そうとしたが、すんでの所で阻止した。

こちらとしては彼を引き取り、不自由ない家や食事、服などを与えていたが彼の心を埋める事はできなかったようだ。

私の本心を言えば、里子をもらう事で世間体を良くしようと目論んでいた。善良な主人という姿を周りに示したかった。商売のためでもあるし、将来の市長になるために名前を売ろうとしていた。彼を利用しようとしていたのだ。

ところが彼は家の外では不良達とつるみ万引きやゆすりたかりの毎日。いわゆるチンピラに成り下がっている。警察にも何度も世話になった。

ある日、いつものように彼が野生をむき出しにしているから、私も我を忘れて彼の胸ぐらを掴んで頬を思い切りビンタした。倒れこむが、起こして何度もビンタをした。いつもは穏やかな振りをしていたが、この時は自分の中の野生に自分でも驚いた。

彼は落ちていたフォークで私の脇腹を突いてきた。しかし服の厚みで傷は浅い。彼の殺意が尋常ではないから、彼を力づくで押さえ込み、妻に警察を呼んでもらい連行してもらった。

警察と役所へは賄賂を送り、彼との縁組を解消してもらった。彼とはそれっきりだ。その後、彼はマフィアでやや名前が通っていたらしいが、しばらくして彼の死体が港の沖で見つかったそうだ。


環境は人を変えるが、周囲の人の思惑通りには変わらない。それぞれが持って生まれた資質や魂のレベル、生の課題を抱えてやって来る。偽善者ぶって里子を善良に仕立てあげようなんて思い上がった事をも考えていたが、そんな目論見は簡単に打ち砕かれる。言語化できないだけで、彼は初めから見抜いていたんだ。だから絶対に言いなりになってたまるかと思い続けていたに違いない。

困ったことが起これば金で簡単に解決しようとしていた自分も、心の浅いところでしか感じられなかったのだ。