この世は本能に基づく世界 2


動物の世界では弱肉強食が一般的だ。強い者が勝ち、弱い者が負ける。つまり強い者は弱い者を食す。逆に弱い者は強い者に食される。

では自然界での強い者の特徴とは何か。

身体が大きい者。

力が強い者。

特殊な能力を持つ者。

おおむねこれらに大別される。

つまり傾向としては、大きい者は食われない。力が強い者は食われない。もちろん絶対に食われないわけではないが、小さい者に比べその確率は大きく下がる。

どの動物の種属に生まれるかはその時の生へのテーマとして決まってくるが、ひとたび生まれ出たからには、動物的な力関係は避けようのない事実として体験することとなる。

ここに人間の行動を観察するヒントが隠されている。

人は動物的な本能として、捕食されるという潜在的な死への恐怖を免れていない。だから知恵を使って、大きな者や力の強い者になろうとする。そうすれば、いつでも優位に立てるし負ける確率も下がる。

その恐怖心が強ければ強いほどその反動として、あるいは心のバランスを取ろうとしてより大きな者やより力の強い者になろうという本能的衝動が湧き上がる。

その象徴として、大きな車や家、高級品やブランド品などを身につけたがる。そしてそれらを手に入れたり身につけたりする方法は、それに相応する「お金」が必要となる。こうして恐怖心を消すために人々は大金を稼ごうと躍起になりはじめるのだ。

また、小魚がたくさん群れて周囲に大きく見せようとするスイミー現象もある。より人が多い組織やコミュニティなど、自分の小ささを隠せる場所に属すことで捕食されるかもしれないという恐怖心をかき消そうとする本能的現象だ。

お金が稼げて大きな組織に所属するという両方を満たす方法は、大企業に勤めることだろう。そこの席を勝ち取るには学歴を身につけることが近道だ。

こうして潜在的な恐怖心を出発点として、学歴を得て大企業に属するという反動形成的な行動ができあがる。そして、これらの行動の出発点は恐怖心に対する本能的行動であって、自らの意思ではない。さらに、大企業はこうした恐怖心への本能的回避行動をとった者たちが集まる場所となり、常に根本的な恐怖心を持っていることからその組織の中においても常に疑心暗鬼であり、常にサバイバルモードとなる。これが毎日毎日続くから人々は常に疲弊している。