前世療法 テーマ:他人への奉仕

一人で前世療法やってみた。


僕は以前から、プレッシャーのかかる場面になると右肩甲骨の内側に痛みが出ることがあった。だからそこにまつわる過去生を振り返って、自分の過去を救ってみたいと思う。


右肩甲骨の内側に意識を集中すると…決まって現れる光景がある。今までも何度か試してみたけど、思うように真相に行き当たらなかったんだ。今回はもう少し集中してやってみる。


その決まって現れる光景、風景は第二次世界大戦中、ジャングルというか密林の中で泥だらけの戦闘服を着た日本兵。歳はおそらく20歳くらい。名前は、これもおそらくだが、津田やまと?両手でライフルを持って地面に伏している。周りは爆弾があちこちに落ちて爆音とともに炸裂している。前方からの銃弾も一瞬の閃光のような光が空気を裂く音ともに、数限りなく飛んできている。


彼は右背中に銃弾か、爆弾からの炸裂物からか深く大きな傷を負っている。かなりの出血だ。熱い。傷口がとても熱い。そして息が浅く、呼吸が困難だ。苦しい…。


どうやら彼は僕の前世らしい。やまと君。彼はおそらくここで死んでいる。が、何か抱える思いが強くてこの戦場に留まり続けているようだ。彼を救ってみたいと思う。


イメージの中で私は優しい老年の医者の姿で診断してみる。

「これはとても大きな傷だね。君ね、出血が多いから、もう死んでるよ。うん、死んでる。」

「えっ…?僕はもう…死んで、いるんですか…?」

傷の深手と息のしにくさで、絶え絶えに答える。

「そう。君はもう死んでいるよ。それにね、もう戦争は終わったんだ。ホラ、あっちをみてごらん。君と仲の良かった友達が手を振ってるだろう?あそこにさ、一緒に行こうじゃないか。」

僕は笑顔で彼に手を差し伸べる。

「そうですね…みんな待ってるみたいですね…」


これで密林に囚われた彼を救えるようだ。しかし、彼はまだ立ち上がらない。どうしたのだろう。

「私は…私は、このままでは帰れない…。帰る訳にはいかないんです…!」

どうやら強い思いが残っているらしい。もう少し聞いてみることにした。

「どういうことだい?」

「私は、家族や親戚、先生達、たくさんの人に見送られてこの戦地に来たんです。みんなの期待、そして本営からの期待をも背負ってここまで来たのに、その期待に何も応えられずにこのまま帰ったのでは…このまま死んでいったのでは…家族にも、上官にも顔向けができないんです…!」


なるほど、真面目な青年だ。例え命を落としても、家族達に恥じることのない、むしろ家族の誇りになることをしたい、国のために役に立ちたい、そいうことを胸に抱えていたようだ。

その無念さ、悔しさがそのままここに留まってしまっているみたいだ。



さてこの彼をどうしたものか。そうだ、こうしてみよう。



私はイメージの中で伝令兵に変装して、彼に伝えることにした。

「津田二等兵!津田二等兵ですね⁉︎たった今本部から伝令が来ました!お伝えします!戦争はたった今終わりました!本部で作戦を見直したところ、あなたがこの場所を死守してくれていたおかげで、敵の右翼側の侵攻を見事に防ぐことができていたのです!」

「…本当…ですか?」

「はい!まさに素晴らしいご活躍です!ここの地を抜かれていたら間違いなく本部が挟撃され壊滅していたことでしょう!本当に見事なご活躍でした!」

「良かった…この私でも役に立てたのですね…。」

「はい!この知らせはすぐに大本営と、そして津田二等兵のご家族の元へ電信されました!大本営も、ご家族も本当に喜ばれていましたよ!勲章もご家族に贈呈されました!」

「それは…それは良かった…!嬉しいです…嬉しいです。ありがとうございます。」


彼は伏して銃を持ったまま男泣きに泣いた。


そして私はまた優しい老医者になり再度語りかけた。

「さあ、君の仕事は終わった。大活躍だったね、良かった。胸を張ってみんなの所に行こうじゃないか。」

「はい、そうします。ありがとうございます。」


立ち上がると彼は歩き出した。途中、彼は一度だけ振り返った。一度だけ。わずかに悲しみを含んだような目で。

…まだ何か心残りがあるのだろうか。それはまた別の機会に探ってみよう。


こうして密林に囚われた彼の無念や悔しさを解放できた、と思う。

また肩甲骨の内側がうずくことがあったら、きっと別の人生も絡んでいることだろう。その時は、別の人生と出会えることになるね。


お疲れ様っした、ありがとう津田やまとクン‼︎